自社株引き下げ対策②

Ⅰ.すべての不良債権を処分する

1株当たりの年利益金額は先述のように法人税の課税所得金額をもととして計算されます。したがって、法人税の課税所得を低く抑える方法の一つとして、税務上、認められると判断される債権等の貸倒損失を積極的に活用することになります。

1  債権放棄(債務免除)による貸倒損失の計上

債務者の債務超過の状態が相当な期間継続(後述)しており、回収が困難となっている金銭債権(売掛金、貸付金、その他営業上の債権)について債権放棄(債務免除)を行った場合、明らかに回収困難であると認められるときは、その債権は法的に消滅するので税務上も必要経費または損金に算入することができます。

ただし、債務者の資産状況及び支払い能力からみて回収の可能性があり、債権放棄が債務者に対する経済的利益供与(贈与)と認められるときは「寄付金」とされますから注意が必要です。 上記の債務超過の状態が相当な期間継続しているときとは、通常3年ないし5年以上もの間債務超過の状態の継続であり、容易に健全化が難しいと判断されるときをいいます。
このような状態にある債権について当方から一方的に債権放棄を行い利益を小さくすることになります。また、この行為を第三者的に立証する必要がありますから、税務上も「書面により明らかにされたものに限る」としています。よって一般的には内容証明郵便を利用して、債権放棄の事実、日時、金額等を明らかにし、後日に証拠が残るようにしなければなりません。

2  事実上の貸倒損失と認められる場合

金銭債権等の債権について、債務者の資産状態、支払い能力などから客観的にみてその債権の価値がなくなり、かつその全額が回収不能と認められるときは、税務上も「事実上の貸倒れ」として損金経理ができます。ただし、担保物がある場合は、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできません。
この事実上の貸付れの具体的な判断基準が示されていませんから、事実の認定が判然としなければなりません。

3 売掛債権の貸倒損失の計上

債権のうち商行為による信用取引上の売掛債権については、「一定の事実」(後述)が発生し、回収が停滞した段階で、損金経理の処理をすることと「備忘価額」(1円)を残すことを条件として、形式的に貸倒れとして処理することを認めています。
売掛債権には売掛金のほか、未収加工料、未収手数料、未収地代家賃などの主たる商行為によるものであり、主たる商取引ではない不動産の譲渡による未収金や未収利息などは含まれません。ただし、売掛金の回収による受取手形は含まれます。
上記の形式的要件の「一定の事実」とは次のような場合をいいます。

(1)一定期間以上取引が無い場合
債務者との主たる商取引を停止した時以後1年以上経過している場合(最後の弁済期または最後の弁済期が取引を停止した以後であるとは、もっとも遅い時からをいう。また、その売掛債権に担保物がある場合はすべて除かれる。) よって、売掛金に関する帳簿や売掛金の管理台帳(回収記録などの業務記録のあるもの)などを整えて、事実の立証に備えるようにします。

(2)取立費用が債権額を超える場合
債務者の担当販売員等の同一地域の有する売掛債権の総額が、その回収のための旅費等の取立て費用が採算に合わないような少額な滞留不良債権の場合で、支払いの督促を何回も行ったにもかかわらず弁済がない場合 よって、担当者の地域図や支払い督促の業務記録、回収直接費用などの見積り計算書などを備え置くことになります。

 

Ⅱ.値下がりしている不動産を売却する

会社が所有する不動産等で購入した価額(簿価)より時価が値下りして、含み損が生じているときは、その不動産等を売却して譲渡損失を計上し、利益を小さくします。 ただし、売却先が同族会社や関連会社の場合は、売却価額が税務上問題にならないように注意する必要があります。

1  土地等の適正な時価

会社が所有する土地、借地権等を同族会社や関連会社以外に売却するときは、特別な条件は何もありませんから、通常の実勢価額としての時価で売買取引が行われますからまず問題はないことになります。 しかし、同族関係者間の取引については恣意的になりやすく税務上問題が起きるケースがあります。そこで土地等の売買契約にあたっては「適正な時価」を算定しなければなりません。

(1)地価公示価格を基準とする時価

売買の予定地の評価をする方法として「公示価格」を基準に利用します。 国土交通省の土地鑑定委員会が、毎年1月1日現在の公示地の価格を3月下旬頃に官報で公示します。
この公示価格は複数の取引事例を中心に決められていますからもっとも時価に近いものといえます。ただし、この価格はあくまで目安ですから対象地の条件や売買時期などの修正を加えて算定しなければなりません。地価の公示標準地(公示地)に比しての地形、利用状況、近隣地域の現況、道路等の公共施設、交通状況、都市計画法等の法令の制限などを勘案して判断することになります。

(2)都道府県地価調査標準価格を補完的に利用する
この都道府県地価調査基準地が地価公示地の不足地点と調査時点を補うものとして設けられています。
都道府県の基準地価格は毎年7月1日の価格とし、9月下旬に公報で発表されます。評価方法は公示価格とまったく同じ方法で行われますから補完的に利用されています。また、都市計画区域外の町村にも設けられています。

(3)相続税の財産評価を利用する時価
相続税の評価額は、公示価格水準のおおむね80%の価格水準で設定するようになっています。
よって、評価しようとする土地の路線価を0.8で除すると、その土地の公示価格水準の地価が計算されることになります。
さらに地形等によって評価が違ってきますから、相続税の「財産評価基本通達の付表」を使って修正を加えることになります。

事  例

対象地の近隣に公示価格がない場合
対象地の路線価が627万円(1㎡)とすると
627万円÷0.8=推定公示価格(時価)783万7,500円
対象地の近隣に公示価格がある場合
公示地の価格651万円、公示地の路線価を521万円とすると

路線価で比準ずる。

 

(3)相続税の路線価のない土地の時価
相続税の土地の評価額を計算するための路線価がつけられていない土地があります。このような土地の相続税評価額は「倍率表」により「固定資産税評価額×倍率」の算式で求めます。 固定資産税の評価額は、市区町村に備えつけられている土地(補充)課税台帳を閲覧することによって知ることができます。 また、固定資産税の納税通知書には、各土地の一筆ごとの評価額が記載されています。

固定資産税のための評価額は路線価が定められており、その画地の補正率等によって計算されます。相続税の評価のための付表とは少し相違した率になっています。固定資産税の路線価水準は公示価格のおおむね70%ということになっています。
したがって、固定資産税評価額を0.7で除すると、その土地の公示価格水準でのおよその価額を算出することができますが、固定資産税の評価は3年ごとになっていますので、年度が違う場合は少し無理があります。 よって、公示価格水準のおよその価額を算出するには相続税評価額を求め、その価額を0.8で割って算出することになります。

 

2  実践上の土地の時価決定

同族会社間や関連会社間の土地売買価額の決定においては、先述した「公示価格」と「都道府県の地価調査標準価格」を計算し、さらに「相続税の財産評価基本通達及び付表」により路線価または固定資産税の評価額の倍率で評価された「相続税評価額」を0.8で割り戻した価格などを計算し、平均価格を算出する合理的な方法で評価すれば適正な時価といえるでしょう。

(1)
(2) とくに困難な場合は、不動産鑑定士による評価証明による時価とする。

 

Ⅲ.株式配当金を引き下げる

1  1株当たりの年配当金額の計算

類似業種比準価額方式によって株価計算を行う計3要素の中の1株当たりの配当金額は、課税時期(株価計算時)の直前期末前2年間の1株当たりの平均配当金で計算します。
この配当金額には、非経常的配当(特別配当、記念配当など)は含めません。ただし、中間配当は含みます。

2  配当金額の引下げ

オーナー会社の資本金は比較的少額な場合が多いため、配当金額を考慮して支払うと配当率が高率になっているケースが多く見受けられます。その結果、株価が高額になっています。

 


しかし、オーナーは大株主ですから株主総会決議による配当率を引き下げるのは容易です。2年間だけ無配にすれば、比準要素はゼロになります。

取引先等の外部株主がいる場合などでは、「会社創立○○周年記念」といった特別配当を実施することが考えられます。この場合は非経常的な配当になりますから、計算式上の配当金額が除かれて計算することになります。

*3

 

3  配当金を2年無配にした事例
 評価会社
・課税所得金額
・1株当たりの配当金
・1株当たりの簿価純資産価額
・類似業種株価
・発行済株式総数
00
40,000万円
10円
3,000円
377円
4万株(@500)

 

(1) 1株当たりの類似業種比準価額
(2) 2年連続して無配とする。
(3) 無配後の1株当たりの類似業種比準価額
(4) 評価減の効果

 

Ⅳ.借入金で賃貸不動産物件を購入する

純資産価額方式の評価方法による株価が高くなっているのは、相続税評価額による純資産(資産マイナス負債)が多額になっている場合です。すなわち、過去の内部蓄積(剰余金等)が大きくなっているか、土地等や有価証券の含み益が大きくなっているケースですから、株価引下げの方法として含み益のある資産を除外することと、負債を増加させて純資産を減らすことになります。 
事例による対策と効果

貸借対照表
 資 産 20億円 負 債
資本金
剰余金等
10億円
0.1億円
9.9億円
20億円 20億円
・資産、負債は相続税評価額とし、含み益は0とする。
・発行済株式総数 20,000株
・全額借入金による賃貸用ビルの購入とする。
・取得価額    土地  3億円
建物  3億円
・相続税評価額 土地 2.5億円(路線価)
建物  2億円(固定資産税評価額)
・土地の借地権割合
・建物の借家権割合
70%
30%
土地の路線価は、公示価額の地価(時価)のおおむね80%の評価とし、固定資産税評価額はおおむね70%の評価とされるのが通常。

 

1  不動産の取得前の純資産価額
2  不動産の取得直後の純資産価額

会社が課税時期前3年以内に取得した土地等及び建物等の価額は、路線価や固定資産税評価額ではなく「通常の取引価額」(いわゆる時価)で評価されます。なお、その土地等または建物の帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、帳簿価額によって評価することができます。

不動産の取得直後ですからこの場合は当然帳簿価額となります。 ただし、賃貸用の不動産ですから、土地については貸家建付地としての評価減、建物については貸家としての評価減の適用できます。*1

 

 

3  不動産の取得3年経過後の純資産価額

賃貸用の不動産取得後3年を経過すると、土地は路線価や倍率方式等、建物は固定資産税評価額による相続税評価額で評価することができるようになり、土地については貸家建付地、建物については貸家としての評価減が適用されます。*2

*2
(1) 土地の評価減後の価額
(2) 建物の評価減後の価額
※土地の路線価と建物の固定資産税評価額は、取得時の価額と同額とする。(3) 貸ビルの取得3年経過後の相続税評価額による貸借対照表は、次のようになります。

なお、借入金は3年間の元本措置とし、他の資産、負債も変わらないものとします。

貸借対照表
資 産
土 地
建 物
200,000万円
19,750万円
14,000万円
負 債
借入金
純資産
100,000万円
60,000万円
73,750円
233,750万円 233,750万円

(4) 貸ビルの取得3年経過後の1株当たりの純資産価額

※ 純資産価額の引下げ効果は、50,000円から36,875円となり、約26.25%減の効果となる。
目的から探す
事業承継を考えたい
節税したい
会社を黒字化したい
成長戦略を考えたい
創業したい
Copyright© 2017 みどり合同税理士法人グループ All Rights Reserved.