自社株引き下げ対策③

Ⅰ.オペレーティング・リースで健全な赤字を作る

1  オペレーティング・リースの概要

オペレーティング・リース取引とは、とくに航空機、船舶、プラント設備等の大口取引に用いられるリース・ファイナンスです。 リース期間が法定耐用年数の120%以内とし、税務上の条件をクリアした賃貸借取引等をいいます(実務上はリース会社が組成して金融商品として販売されています)。
投資家(事業会社等の出資者)は、物件の運用事業を行う営業者(リース会社の100%子会社)と匿名組合契約を結び、物件の購入価額の30~40%を出資します。

オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定率法により償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益は赤字となり、投資家に損失が分配されることになります。

このようにオペレーティング・リースは、将来の赤字が予想できますから、原則として利益を圧縮することが可能になります。

匿名組合とは
出資者が事業の運営を営業者に任せ、分配金を受け取る契約のことです。商法535条及び536条等に定められています。出資金の運用は営業者に一任され、運用資産の名義は、営業者の名義になり、出資者は匿名になります。

また他の保険商品等の損失が予想できるものと組み合わせて株価引下げ対策することになります。
ただし、企業の損益予想はあくまで予測ですから贈与する株式の評価計算時点の決算では慎重に損益計算を行うことが必要になります。なお、オペレーティング・リースの後半はペーパー上の黒字が発生し、繰り延べられた利益が多額になりますから事前の対応もまた十分考えておくことが大切です。

2  オペレーティング・リースの仕組み

 

S・P・C法人
「特定目的会社」といい、特定の資産のみを所有し運用するとともに、出資者に損益の分配を行う会社のこと。
ノン・リコースローン
リース物件(航空機等)以外に担保をしないで、かつ、他の財産、保証等に遡及しないローンのこと。

 

3  投資リスクについて

(1)借主の倒産リスク
借主が倒産した場合は、リース契約は終了し、同時に匿名組合契約も終了します。営業者は返還されたリース物件を処分し、ローン残債を清算した後、残額を投資家に配分します。または再リースを行うケースもありますが、リース料は減額されるリスクがあります。

投資家はリース借主会社の格付等で会社内容を検証しなければなりません。
また、第三者(保険会社等)の最低保証等があればよりよいでしょう。

(2)全壊リスク
リース物件が全壊した場合は、リース契約は終了し、同時に匿名組合契約も終了します。リスクはすべて借主が負うが、保険金で出資金は全額回収されます。ただし、その時点で益金が計上されることになります。

(3)税制改正のリスク
契約締結時の前提としていた税制が改正された場合のリスクがあります。
リース事業が黒字になった段階で税率が上がると投資効果は低下します(税率が下がれば投資効果は上昇します)。

(4)為替変動リスク
為替相場の変動によるリスクはあります。ただし逆に為替差益にもなります。毎月のリース収入の変動よりも、購入選択権の行使またはリース期間終了時での出資金の為替リスクが大きくなる場合があります。よって投資は税効果と比較して判断する必要があります。

(5)清算時のリスク
リース期間の終了により、リース物件を売却して清算したときに、当初予定の残価で売却できない場合のリスクがあります。通常は出資金の全額回収が予定されている購入選択権が行使されますが、もし行使されないケースがあったときはリスクがあります。ただし、その残価が第三者で保証されている場合、リスクは減少します。

(6)営業者のリスク
営業者(事業運用会社)はS・P・C法人ですから通常倒産はありません。ただし、親会社(100%株主)が倒産した場合は事業の管理ができなくなりますから別会社への移譲が必要になります。また、親会社が倒産した場合は、機体等を廉価で借主が購入できる契約になっているケースがあります。したがって、残価が少なくなりますから投資家に損失が生じることになります。

 

Ⅱ.含み益の高い土地を子会社化する

市内の中心地に工場の敷地を所有している会社や都市部に店舗の敷地を所有している老舗会社などでは、会社の規模に比べて土地の比重が大きく、かつ多額な土地の含み益を保有している場合があります。

純資産価額方式による株式の評価額を下げるためには、土地の含み益を反映させないようにしなければなりませんから、土地を分離して株式に転換することになります。
すなわち、本体会社の土地を分離して、子会社を設立し、不動産を直接保有するのではなく、子会社を通して間接に所有するのです。この子会社株式の評価が純資産価額より低い類似業種比準価額が適用できるようにすれば、本体会社の純資産価額が下がり、本体会社株式の評価を下げることができます。
ただし、土地のみの分離は、税法上の適格会社分割や適格現物出資、適格事後設立の事業譲渡に該当しないと認定されることがありますから、建物、機械、備品等を含めた子会社設立とした方がよいと考えます。なお、人員については出向でもかまいません。

1  実践上の注意点

(1)子会社は土地保有特定会社に該当しないようにすること

土地保有特定会社に該当すると、純資産価額による評価方法だけが適用されることになり、本体会社の株式の評価上、子会社株式の純資産価額については、42%控除が適用されません。よって評価減効果はまったくありません。
判定時期の直前ではなく長期的に借入金により総資産を増大するか、他の資産も含めて負債付きで分社し、総資産中に占める土地保有割合を低下させます。

(2)本体会社は株式保有特定会社に該当しないようにすること

3)子会社、本体会社ともに類似業種比準価額を下げるために、
配当はゼロにし、利益は低く抑えるようにすること

2  事例による対策と効果

事例による対策と効果

会社の概要

・類似業種株価(その他の食料品製造業) 291円
・1株当たりの配当金 5円
・1株当たりの利益金額 50円
・1株当たりの純資産 1,000円
・会社の規模
(年間売上高6億円従業員20人)
中会社の子会社
評価時の貸借対照表
 土 地
建 物
その他の資産
0.5億円
2.5億円
7億円
  負 債
資本金
剰余金等
6億円
0.2億円
3.8億円
10億円 10億円

※ 土地の相続税評価額は6.5億円とし、その他の資産、負債は相続税評価額と同額とする。
※ 発行済株式数4万株(1株当たりの価額500円)

株 価

・1株当たりの純資産価額
・1株当たりの類似業種比準価額
・1株当たりの評価額
・会社の株式の評価額


(1)土地、建物を分割し、子会社を設立

土地、建物と負債の一部を分割します。
子会社は、土地保有特定会社にならないようにします。
子会社の貸借対照表

借  方 貸  方
 土 地
建 物
0.5億円
2.5億円
  負 債
資本金
資本準備金
2.0億円
0.2億円
0.8億円
3億円 3億円
※ 発行済株式数4万株

(2)分割後の子会社の株価


分割設立後、3年経過しますと類似業種比準価額が適用されます。
ただし、土地保有特定会社に該当しないこと(後述)。
土地保有特定会社の判定(非該当)
 

株価(数値は変わらないものとする。)

イ)
1株当りの純資産価額
ロ) 1株当りの類似業種比準

・類似業種株価(不動産賃貸業) 718円
・1株当たりの配当金 0円
・1株当たりの利益金(毎期利益金200万円) 5円
・1株当たりの純資産価額 257円
(毎期の剰余金100万円が増加したものとします。)
ハ) 1株当たりの評価額(子会社)
ニ) 全社株式の評価額

土地保有特定会社
土地保有特定会社とは、会社の区分に応じて、相続税評価額による純資産額に占める土地等の相続税評価額が次のように該当する会社のことをいいます。

会 社 区 分 土地保有割合
大 会 社 70%以上
中 会 社 90%以上
小会社 卸売業 総資産価額20億円以上 70%以上
総資産価額8,000万円以上20億円未満 90%以上
総資産価額8,000万円未満 判定対象外
卸売業以外 総資産価額10億円以上 70%以上
総資産価額5,000万円以上10億円未満 90%以上
総資産価額5,000万円未満 判定対象外


(3)分割後の本体会社の株価


分割後の本体会社の貸借対照表

子会社株式
その他の資産
1億円
7.2億円
負 債
資本金
剰余金
4億円
0.2億円
4億円
8.2億円 8.2億円
※ 3年後の子会社株式の相続税評価額3億6,648万円。
※ 当期利益金は1,500万円減少するものとし、配当は無配とする。
※ 剰余金等は2,000万円増加するものとし、他は変わらないものとする。
株式保有特定会社に該当しないこと(後述)
 

株価

イ)
1株当たりの純資産価額


※ 約23.2%株価が下落する。
ロ) 1株当たりの類似業種比準価額
※ 配当を無配にし、利益金額を小さくすることによって約54%株価が下落する。
ハ) 1株当たりの評価額
※ 株価は約29%下落する。
株式保有特定会社
会社の区分に応じて、相続税評価額による総資産額に占める株式等の相続税評価額が次のように該当する会社のこと。
株式保有特定会社の判定表

会社区分 株式保有割合
大会社 25%以上
中会社 50%以上
小会社 50%以上

 


株式等とは、株式及び出資をいい、棚卸資産として所有しているものも含まれます。

 Ⅲ.高収益部門を別会社にする ~事業譲渡~

高業績を上げている優良な会社は、必ず高収益部門の事業を持っています。 オーナーが健康な間に後継者を決めたならば思い切って高収益部門を別会社にして後継者に経営の実際を任せてみます。本体会社の自社株式の株価が下がりますから、自社株対策も実施するようにします。

1 高収益部門を事業譲渡する方法
(1) 会社法制定過程で、会社以外の商人については「営業」、会社の営業は「事業」ということと整理されました。
(2) 後継者を株主とする事業を譲り受ける会社を設立します。
(3) 高収益部門の資産、負債等のすべての事業を譲渡します(事業譲渡契約の締結)。事業には、得意先、仕入先、取引銀行の預金、融資金等及び従業員を含みます。
(4) 譲渡する資産、負債の譲渡価額
資産、負債は、個々の資産、負債の時価で評価して決定します。 例えば機械等は全体でいくらとするのではなく一個の機械ごとに時価を算定することになります。減価償却資産は通常簿価を時価として行われています。
ただし、土地等に含み益(時価と簿価の差額)がある場合は譲渡する会社に譲渡益が生じますから、賃貸にします。この場合、建物と一括して賃貸するケースと土地だけを賃貸し、建物を譲渡するケースがあります。
税務上の各種引当金、準備金は原則として引き継げませんから、譲渡の対象にはしません。
(5) 債権、債務の譲渡は、通常の売買ですから当然債権者及び債務者の承諾が必要になります。
(6) 高収益部門の営業譲渡は、会社法上事業の重要な一部の譲渡に当たりますから、株主総会の特別決議(会309Ⅱ)による承認が必要です。

株主総会の特別決議
総株主の議決権の総数の過半数の株主が出席し、出席株主の議決権の2/3以上の決議によること。
2  事 例 (川野産業株式会社)
私は化学製品の卸売業の会社を経営するオーナーです。
相続人は娘だけですので、娘婿を後継者にと考えていたのですが、経営能力などから、後継社長は第三者である専務に任せることにしました。娘等の生活のこともありますし、また私の孫に、将来期待もしたいので、会社を分割して事業の継承とともに、私の所有する株式の大部分を娘と孫に移しておきたいと思っています。よい方策を教示ください。

 

(1) 現状の株価と株式財産額
直前期の川野産業株式会社の貸借対照表

借  方 貸  方
流動資産
建 物
土 地
その他の固定資産
50億円
5億円
10億円
5億円
流動資産
固定負債
資本金
剰余金等
35億円
10億円
0.2億円
24.8億円
70億円 70億円
※固定負債の内訳 長期借入金 10億円
※土地の相続税評価額     20億円
(その他の含み損益はないものとする。)
・当期売上高
・当期課税所得金額
(前期課税所得金額)
・発行済株式総数
・当期支払配当金
・オーナー所有株式数
120億円
5億円
5.2億円
4万株
400万円
3.5万株
(1株当たりの資本の額500円)
(前期と同じ)

純資産価額の株価
類似業種比準価額の株価(もっとも低い株価)
一株当たりの株価
オーナー所有株式の相続税評価額
(2) 対策の流れ

将来の後継者(孫)を考え、営業部門を100%支配する分社型新設分割を行います。
娘婿を社長とする現在の会社は不動産の保有、配送部門、事務管理部門などの事業を残します。
現在の会社の商号は営業会社が引き継ぎ、元の会社は商号を変更します。
現在の会社の株式評価額をできるだけ低く抑えて、相続人、孫等への将来株式を生前移譲します。
ただし、時期社長となる専務や他の役員にも一部保有してもらい、今後オーナーの親族と円満に事業が継続していけるように配慮します。
分社型新設分割

 

Ⅳ.高収益部門を別会社にする ~会社分割~

1  会社分割による対策の方法 事例(川野産業株式会社)
会社分割日の新設営業会社㈱カワノの貸借対照表

借  方 貸  方
流動資産
その他の固定資産
48億円
2億円
流動資産
固定負債
資本金
剰余金等
35億円
10億円
0.5億円
4.5億円
50億円 50億円
※発行済株式数 10万株(@500)

 

会社分割日の川野産業株式会社(親会社)の貸借対照表

借  方 貸  方
現預金
子会社株式
建   物
土   地
その他の固定資産
2億円
5億円
5億円
10億円
3億円
資本金
剰余金等
0.2億円
24.8億円
25億円 25億円
※ 分割後ただちに商号を株式会社カワノに変更し、営業会社の商号を川野産業株式会社とする。

 

(1) 株式保有割合
旧会社(商号変更後の㈱カワノ)の株式保有割合を25%以下(大会社)に保つようにします。

㈱カワノは営業会社である川野産業㈱の株式を100%保有しており、川野産業㈱が、川野産業㈱が相続税法上の大会社に該当しますと、まず類似業種比準価額による株式評価額を計算します。

川野産業㈱の株価

借  方 貸  方
流動資産
建 物
土 地
その他の固定資産
50億円
5億円
10億円
5億円
流動資産
固定負債
資本金
剰余金等
35億円
10億円
0.2億円
24.8億円
70億円 70億円
※固定負債の内訳 長期借入金 10億円
※土地の相続税評価額     20億円
(その他の含み損益はないものとする。)
・1株あたりの配当金
・1株あたりの利益金
・1株あたりの純資産
5円
400円
1,100円
(支払配当額500万円)
(利益金額4億円)
(純資産額11億円)
 (利益金額4億円のうち2億円が毎年留保されたものとし、
評価時期は3年後とする。)

・株価(類似業種の株価、比準値は変わらないものとする。)

・全社株式の評価額

川野産業㈱の全社株式の評価額
分社時純資産価額5億円+増加剰余金6億円=11億円
㈱カワノの3年後の純資産価額

相続税評価額による純資産

土 地
子会社株式
その他
20億円
11億円
10億円
11億円
(含み益6億円)
合 計 41億円

※㈱カワノの剰余金等の増加はないものとする。
※その他の資産は分割前と変わらないものとする。

株価
(2) 会社分割後の㈱カワノの類似業種比準価額
類似業種株価等の比準値

・類似業種株価の判定  471円
不動産賃貸収入    30%(不動産賃貸業)
配送請負収入     40%(道路貨物運送業)
事務管理請負収入  30%(その他の産業)
一つの中分類、大分類のなかに二つ以上の業種目に全て属さない場合は、大分類No.118「その他産業」とする。
・1株当たりの配当金
・1株当たりの利益金
・1株当たりの純資産

(800万円) 20 円
(25億円) 6,250 円
 (3年後簿価純資産価額は変わらないものとする。)
・株価
  ※会社区分は大会社とする。
(3) 1株あたりの株価(①と②の低いほう
(4) オーナー所有株式の相続税評価額
  ※後継者への生前移譲をする場合は、他の対策も含めて実行する。

 

 

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