不況に負けない財務体質を作る

財務体質の改善には、バランスシートの改善と収益の改善が不可欠です。
バランスシートの改善には「資産の処分」「財務バランスの改善」「資本の充実」があります。
収益性の向上には、売上高の確保とコストの削減しかありません。
しかし、売上高は取り組みを始めたからといってすぐに成果が出るものではありません。そこで、まずやるべきことは「コストダウン」を図って出血を止め、その上で目標利益獲得のための売上高を確保するという順序になります。

1  資産の処分

バブル期に投資をして、そのままになっている土地、株式、ゴルフ会員権などは資金を生まないばかりか、固定資産税等の維持費がかかります。このような遊休資産は思い切って処分すべきです。売却損を計上することに躊躇する場合がありますが、損失を補って余りあるほど効果があるのです。処分して得た資金を借入金の返済に充てたり、損金算入による節税も可能になります。つまり、税金を払う為の資金の流出を抑え、逆に資金繰りの改善に貢献するのです。

また、赤字部門については思い切って撤退も検討します。赤字であるということは、収益を産まないばかりか、資金を垂れ流します。したがって、赤字部門からは、思い切って撤退をすべきです。本業とは無関係な事業であれば、撤退や売却に際して障害となるものが無いはずなので即座に撤退することです。本業に関連の深い部門の場合は、本業に影響を与える場合があるので慎重に行わなければなりませんが、赤字部門の黒字化を検討し、出来なければ売却します。その際、外注等の対応策を検討します。

企業によっては、その部門に対する経営者の特別な思い入れがある場合がありますが、この際、思い切って私情を棄て撤退して、資金繰りを改善させるべきです。

【資産処分の具体例】

遊休施設を売却する
費用対効果の高いリースバックを検討する
ゴルフ会員権を売却する
株式の持合の解消

 

2  財務バランスの改善

財務バランスの改善は、まず資産と負債の圧縮に尽きます。
遊休資産や投資有価証券などの処分は前述していますので、ここでは主に流動資産と負債についての改善を取り上げていきます。

(1) 流動資産の改善
売掛債権の早期回収
売掛債権は、正常の取引条件によるものは、売上高の増加に見合ったものであれば、通常の回収で構いませんが、問題は、回収遅延となっている売掛債権と回収見込みがない不良債権です。
営業マンは販売には注力しますが回収には無頓着である場合が多いので、回収遅延に対するペナルティを設けるなどして、営業マンに回収の重要性を徹底します。
また、正常の取引条件であっても回収サイトが長い取引先に対しては回収サイトの見直し交渉を行うことです。
不良債権については、貸倒れ処理を行い在庫からなくしてしまうことです。これにより金額によっては、一時的に赤字となってしまう場合もありますが、やむを得ません。むしろ、赤字になることを嫌い、不良債権を放置しておくことの方が問題です。
事情がはっきりしていれば、金融機関も理解を示してくれます。
また、不良債権を発生させないためにも、販売先の信用調査を行ったり、同業者からの情報を収集したりして販売の可否を誤らないようにしなければなりません。さらに取引先別に販売与信限度額を設定し、与信限度額以上の販売を行わないよう営業マンに徹底すべきです。
在庫の削減
余剰在庫は、製造業であれば「作り過ぎ」の在庫、卸・小売業であれば「仕入れ過ぎ」の在庫ということになります。
在庫が多ければ販売ロスは防げるかもしれませんが、販売見込みよりも実際の販売量が下回ったり、販売までの時間が長ければそれだけ運転資金が必要となりますし、商品や原材料、仕掛品などの保管コストもかかりますので、在庫を持ちすぎるということはそれだけ資金繰りを悪化させることになります。
また、販売機会を逸して商品価値が下がった商品や返品などで再び在庫となってしまったものは、1日も早く処分して現金化すべきです。自社の在庫の内容を一つひとつ吟味して早期に販売促進をかけるものと、処分販売(場合によっては廃棄)するものを区別して在庫削減を図っていきます。
今後の原材料や商品などの仕入については、販売計画や生産計画と連動したものにしなければなりません。
(2) 負債の圧縮
負債の圧縮は、前述の資産の処分等で現金化し借入金を返済していきます。
また、借入金の担保となっている定期預金があれば、定期預金を解約して借入金を返済することも金融機関と交渉すべきです。もちろん、金融機関との関係を考慮しながら実施しなければなりません。一方的に実施すると関係が壊れてしまい、今後の融資にも影響が出る可能性もありますので注意が必要です。
負債の中に役員からの借入金がある場合は、資本金に振り替えてしまう方法があります。これにより、資本の充実と負債の圧縮の両方に効果があります。また、債権放棄をしてもらい、特別利益として計上することも選択肢の一つですが、利益が出ている年度にこれを実施すると、税金が発生してしまい余分なキャッシュアウトとなってしまいますので、当該年度で欠損が出る場合(たとえば資産の処分で売却損が出ている、在庫の廃棄に伴う損失が出ている場合など)や、繰越欠損がある場合にはこの方法が有効です。
自社の状況に応じて判断することです。

3  資本の充実

資本の充実は、増資による資本金の増加と毎期の利益の積上げといった方法があります。 まず、増資による資本金の増加ですが、資本金は株主への返済義務がないことから、安定的な資金調達財源になります。 しかし、株主に対する配当という資本コストも生じることや、資本の金額によっては法人住民税の税率が変わることを考慮しなければなりません。 また、役員等からの借入金があれば、借入金の資本金振り替えや債権放棄による特別利益の計上によって純資産を増加させることができます。 しかし、これはあくまでも緊急対策ですので、資本充実のためには毎期の利益の積上げしかありません。

4  収益改善の中・長期的対策

収益の改善には固定費の削減、変動費の削減、売上高の増加の3つの方法があります。固定費や変動費は比較的短期間で成果が出ますが、売上高の増加は時間を要します。
したがって、中・長期的な視点で売上高増加のための戦略を立てることが必要となってきます。

(1)部門損益の見直しと赤字部門からの撤退
業績悪化企業であっても、部門損益という観点から見ていくと、全ての部門が悪いことは稀です。部門別損益分析を行い、各部門について検討を行うことが必要です。収益貢献度を明確にすることによって、今後の対策をどのように打つべきかが明らかになります。特に赤字の部門については、他部門との関係を考慮する必要はありますが、即時撤退することが収益構造を飛躍的に改善させる場合があります。
また、赤字部門からの撤退により、コア事業に経営資源を集中させることが可能になるので、コア事業の収益力がさらに高まります。

(2) 売上高の増加
専門性の確立による価格競争の回避
競争戦略には、「差別化戦略」「集中化(ニッチ)戦略」「価格戦略」とありますが、中堅企業や中小企業は決して「価格戦略」を選択してはいけません。価格戦略を選択できるのは「戦力」と「体力」を持つ強者だけです。
アライアンス(提携)を組む
アライアンス(提携)は、組み方によっては強力な武器となります。アライアンスの際のポイントの一つ目は、アライアンス先の選定です。自社がターゲットとする企業や市場において有益な情報を持っていたり、すでに市場に入り込んでいたりしているような先を選定します。二つ目は、選定したアライアンス先に「水先案内人」となってもらったり、相撲でいうところの「露払い」役となってもらったりすることです。自社が過去に接触を持っていない市場においては、先方も相当な警戒心を持っているので、このアライアンス先が強力な仲間となります。
将来の売上確保のための商品開発を行う
イ) ポジションを分析する
まず、自社の商品・サービスが対象としている市場、対象とすべき市場、対象としたい市場とマッチしているかどうか検証します。自社のこれまでの認識に反して意外とマッチしていない場合があります。
次のような4象限からなる図にポジショニングすると分析がしやすくなります。
次に、自社の商品(製品)・サービスのマッチングをどう図るかを考えます。具体的には、ターゲット市場を変えるのか、自社の商品(製品)・サービスを現時点の対象市場に合わせるのかを検討します。
また、将来的にどんな商品(製品)分野、どんな市場分野を自社の活動対象としたいか、するべきか、いくつかの商品(製品)や市場をどのような組み合わせで持つべきか、絞り込んだ商品(製品)を深耕するか、または商品(製品)系列の幅を拡げていくか等も検討します。
ロ) ライフサイクル上のどこに位置しているのか
商品(製品)・サービスは、それぞれのライフサイクルを持っています。企業は、自社の商品(製品)・サービス群が、現在ライフサイクル上のどのポジションに位置しているかを確認する必要があります。自社の商品(製品)・サービス群の多くが成熟期以降に位置しているならば、新商品(製品)・サービス群を早く投入しないと、業績は下降していくことになります。
また、導入期にある商品(製品)・サービス群については、市場との整合性、市場の将来性、競争状況等から今後の戦略を検討する必要がありますし、成長期にある商品(製品)・サービス群については、利益の極大化、シェアの拡大を図るための戦略を検討すべきです。
ハ) 商品(製品)ごとの売上・利益に対する貢献度はどうか
商品(製品)別の売上高、貢献利益をABC分析や推移表により分析し、どの商品(製品)を強化するか、どの商品(製品)の取り扱いを中止するか等を検討します。
【ABC分析】
PPMを活用した経営資源の配分
規模の大きな企業であっても、自社の経営資源は限られているため、複数ある各事業を最適に組み合わせて(事業ミックス)、経営資源を有効に配分する必要があります。その技法としてプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)があります。
PPMは、横軸に「相対的マーケットシェア」の高低をとり、縦軸に「市場の成長率」の高低をとって、四事象のマトリックスをつくります。PPMでは、「相対的マーケットシェア」を資金の流入、「市場の成長率」を資金の流出と捉え、複数事業への資源の有効配分を分析する枠組みです。
イ) 金のなる木
相対的シェアが高いため、資金の流入が大きく、また市場成長率が低いため、資金の流出は少なくてすみます。よって、この事業においては大きな資金が確保できます。
ロ) 花形製品
相対的シェアが高いため、資金の流入は大きいのですが、市場成長率が高いため、資金の流出も大きくなります。よって、この事業において資金は確保できません。
ハ) 問題児
相対的シェアが低いため、資金の流入が小さいのですが、市場成長率が高いため資金の流出は大きくなります。よって、この事業は大きな資金需要が発生します。
ニ) 負け犬
相対的シェアが低いため資金の流入が小さいのですが、市場成長率が低いため、資金の流出は少なくてすみます。

PPMによる事業ミックスは、①金のなる木で得たキャッシュを、②問題児への投資に充て、その問題児を③花形製品に育て、積極的な投資を行ってシェアを高め、①金のなる木に成長させることが理想となります。

主力商品が競争力を失ったとき悲惨な状況になることは誰もが理解していることですが、問題はいつ失うかです。3年後、5年後、あるいは他社の新商品の登場により突然失うかもしれません。商品のライフサイクルは近年、特に短縮傾向にあります。新商品の登場やモデルチェンジは毎日のように新聞等で紹介され、扱い商品の中に新商品がないと顧客から魅力のない会社とみなされるケースもあります。

商品開発は会社にとって非常に大切な要素です。主力商品が衰退期に入る前に、ポスト主力商品が投入できる体制を整えておかなければなりません。

商品開発は、取り組みを始めてすぐに成果が出るものではありません。場合によっては、2年、3年の歳月を必要とすることもあります。

しかし、すぐに成果が出ないからといって、その取り組みを止めてしまっては、企業の成長はおろか、衰退の一途をたどることになりかねません。

「種まき」と「収穫」のバランスをとる
顧客拡大やマーケット拡大を考えるとき、「種まき」をしなければ「成果」という「果実」は刈り取れません。継続的に安定した業績を上げるためにはこの種まきと収穫のバランスが重要になります。
成果を重視するあまり、種まきを忘れて刈り取りに偏重した営業活動は、気付いた時に案件不足となり手遅れとなってしまいます。
「種まきと収穫を交互に行うパターン」からいち早く「種まきと収穫のバランスが取れたサイクル」にシフトし継続していく事が成果獲得のポイントです。
イ) 新規取引先拡大の種まき
新規取引先拡大ということになると、まずはマーケットリサーチが必要です。その市場に種を蒔いて果実となる可能性はどうなのか(ニーズがあって、商売として成り立つのか)、蒔く種が自社にはあるのか(販売・提供できるサービスはあるのか、なければどのようにして手に入れるのか)、競合(ライバル)はあるのかないのか、ということです。
「可能性あり、この市場を責めていこう」と判断し、戦略を立てたならば、次は、どうやってその市場に入り込むのか、という戦術論になってきます。まずは、「出会いの場」を作ること。イベントの開催、取引先からの紹介、異業種ルートでの出会い等、様々な手法があります。
ロ) マーケットエリア拡大の種まき
マーケットエリア拡大においては、まずは現在のマーケットにおいての自社のポジショニングを確認しなければなりません。現在のマーケットにおいて、自社の強みは何か、また弱みは何か、シェアはどの程度か、これらを十分に分析した上で、今度はどの辺りまでマーケットを拡げていくのかを検討していくことになります。
もちろん、ターゲットに考えているマーケットにおいて同業他社が持つシェアはどの程度であるのかも十分に考慮しなければなりません。前述したように、すでに相当なシェアを占められているマーケットに対して、同じ商品やサービスで挑むためには、「価格化戦略」「集中化戦略」「差別化戦略」ということになりますが、「価格化戦略」は強者つまり体力や戦力のある大手企業がやるべき戦略で、中堅企業や中小企業が取るべき手ではありません。
中堅企業や中小企業がとるべき戦略としては、「集中化」と「差別化」の2つしかありません。しかも、経営資源を様子を見ながら投下するのではなく、それこそ「一夜城」を築くつもりで、経営資源を集中投下することが必要です。
このようにして、ターゲットとするマーケットに一気に種まきを完了させるのです。
ハ) 新規分野進出の種まき
新規分野進出の時は、まずは自社の認知度を上げることから始めなければなりません。そのための種まきの手法としては、イベントの開催や、もし自社が他の分野でブランド力(社名を聞いただけで、ブランドが浮かんでくる。例えば、○○工法の△△建設といったようなイメージ)を持っているのであれば、その信頼性を武器に「○○工法で多くのお客様のご支援をいただいてきた△△建設が、このたびそのノウハウを駆使した老人用マンションを建設!」というような形で、新規分野におけるイメージ戦略をとるのもひとつの方法です。
また、マーケット拡大の時と同様に、新規分野進出においても、経営資源の集中投下を行います。
事業は、多角化し、その組合せの幅が大きければ大きいほど、相乗効果を発揮して、成長性も、安定性も飛躍的に高まります。優秀な会社は、いくつもの事業や商品や得意先を上手に組合せて、相乗効果を上げているのです。
商品や得意先の多角化は、相乗効果を生みますし、思いがけない危機に対するヘッジとしても役立ちます。本来は、商品が売れて儲かっているときに、多少の利益を減らしても、期間を定め、金額を決め、人を配置して、チャレンジすべきです。
しかし、中堅・中小企業がとるべき戦略は、多角化ではなく柱作りです。自社の商品が援用できるマーケット、あるいはマーケットが援用できる隣接商品による「多柱化」ということになります。
ニ) 変化の兆しをつかむ
市場や顧客の変化は、大小さまざまです。大きな変化は水面上にあることが多いため、誰もが認識できますが、小さな変化は常に水面下で起こっており、場合によっては見逃してしまうほどの小さなものもあります。
この水面下で起こっている小さな変化を水面上に出る前に素早くつかみ、素早く適切な対応をとっていきます。
水面下で起こっている小さな変化はプラスの動きとマイナスの動きがあり、この動きを敏感に察知して、適切な手を打っていきます。
プラスの動きとは、イベントに反応があったり、営業のアポが取り易くなったりするような動きであり、成果に直接結びつく可能性が高くなります。一方、マイナスの動きとは、突然今まで聞くことのなかったライバル社の名前が出てきたり、商品やサービスの値段が下がったりすることです。
プラスの動きを察知出来ずにいると、大きなビジネスチャンスをみすみす逃してしまうことになりますし、マイナスの動きを察知できなければ、気が付いたら自社のシェアが落ちてしまい、価格決定権すら失ってしまうことになりかねません。
これらの小さな変化を感じ取るためには、より多くの顧客と接して情報を入手し、その情報から変化の兆しをつかみ取る勘も必要です。
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