環境分析を行う

1  SWOT分析を活用し環境分析を行う

(1)分析の目的と内容
経営計画は、現状から「ありたい姿」に到達するための道筋を示したものです。道筋を示すためには、自社が現在どのような状況にあるか現状を正しく把握することが重要となります。自社の現状を正しく把握するための分析として、自社を取り巻く経営環境について分析する「外部環境分析」および自社が保有する経営資源や収益構造について分析する「内部環境分析(自社分析)」を行います。
経営計画の策定は、現状を正しく把握した上で、「ありたい姿」とのギャップを認識することから始まります。現状を誤って認識してしまうと、策定する経営計画が意味のないものになります。したがって、正しく現状を分析することが求められます。
分析時の留意点は、何を明らかにするのかを明確にするということです。これら全ての分析を必ず行わねばならないということではなく、明らかにしたいことを明確にした上でそれに大きく関わる領域について分析することが重要となります。これにより、効率的に分析を行うことができます。

【SWOT分析の観点】
分析結果を整理するための代表的なフレームワークにSWOT分析があります。SWOT分析とは、外部環境分析から市場の機会(Opportunity)、脅威(Threat)を、自社分析から自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)を整理し、それぞれのファクターの組合せで自社の採るべき戦略や施策の検討材料を明らかにするための手法です。

機会
  外部環境におけるビジネスチャンスは何か、自社との関連性は強いか、という観点で外部環境分析の結果を整理します。機会の例として、IT革命による市場拡大、高齢化社会による消費構造の変化などがあります。
 
脅威
  外部環境におけるビジネスリスクは何か、自社との関連性は強いか、という観点で外部環境分析の結果を整理します。脅威の例として、技術革新による画期的新商品の登場、海外からの低価格品の流入などがあります。
 
強み
  自社にとっての強み、すなわち他社に比較して勝っている部分は何か、という観点で自社分析の結果を整理する。強みの例として、独自の技術力・ノウハウなどがあります。
 
弱み
  自社にとっての弱み、すなわち他社に比較して劣っている部分は何か、という観点で自社分析の結果を整理します。弱みの例として、財務体質からくる資金調達力不足、知名度の低さによる人材獲得難、などがあります。

 

 

2 外部環境を分析する

外部環境分析は中小企業にとってなじみが薄いかもしれませんが、地域を限定すればその重要な変化を捉えることができます。また、重要なことはその変化が二度と元に戻ることのない構造的変化なのか、サイクル性のある循環的変化なのかを判断し、自社が活用すべき変化(機会)と克服すべき変化(脅威)に分けて考えることです。

さらに、外部環境をマクロ環境とミクロ環境とに分解し検討します。現在の事業分野に対する影響を分析し、経営課題を決定するのであれば、ミクロ環境分析のみで良いのですが、中長期にわたり現在の事業分野だけでなく、事業構造を変革するための経営戦略を策定するのであればマクロ環境分析も必要となります。

なお、中堅・中小企業にとって実務的な外部環境分析では、ミクロ環境分析を優先すべきです。マクロ環境分析を優先すると、ミクロ環境分析が焦点の定まらないものになる可能性があります。

(1) マクロ環境分析
マクロ環境分析では、政治、経済、社会、技術といった分野について事業や市場に影響を与える情報やデータを分析します。
ただし、業種、規模等からみて影響度が弱い分野については簡単な分析としても構わないし、場合によっては省略しても構いません。
政治的環境要因
  政治的環境要因の調査では、法規制や税制の見直し等を調査します。事業に関連した規制緩和がどのようなスケジュールで進行しているか、規制緩和後にはどのようなビジネスモデルが可能か等の視点で分析します。また、最近では環境や教育に関心の高いNPOなどの市民団体の活動が事業や市場に大きな影響を与えることもあるので、そうした動きにも注意を払うべきです。
 
経済的環境要因
  経済的環境要因の調査では、景気動向、デフレまたはインフレの進行、為替、金利といった経済のファンダメンタル関連の情報やデータが対象となります。こうしたデータについては複数調査し比較検討します。
 
社会的環境要因
  社会的環境要因の調査では、人口動態、世論調査等を調査します。また、事業に関連する要素(環境、健康、教育等)に関する世論調査等も有益な情報なので、調査します。
 
技術的環境要因
技術的環境要因の調査では、新聞、業界紙、雑誌等で報道される新技術から自社のビジネスでの活用イメージが想定できる新技術を抽出し、どこの企業が当該技術で先行しているとか、実用に向けた課題や開発機関等の情報を収集します。
(2) ミクロ環境分析
市場環境分析
市場分析では、下記の視点で、自社が属する業界や、自社製品・サービスの市場規模および今後の見通しを調査、分析します。
●市場規模の変化を見極めているか
●市場の成長性が見込めるか
●収益性の高い市場であるか
●主要製品の販売動向を捉えているか
●顧客像の変化、顧客ニーズの動向の把握
●海外市場への進出の可能性はあるか
イ) 市場規模の変化
  市場規模は、業界の主要企業の売上高と販売シェアから推定したり、業界団体が集計している出荷統計・生産統計の数字を使ったり、調査会社の業界レポートを参考にします。市場規模については、厳密な把握は難しいケースが多いのですが、中期経営計画策定という目的を考えると、細かい数字にこだわるより、大きなトレンドを捉える方が重要です。
 
ロ) 市場の成長性
  中期経営計画では過去3~5年間の成長率を参考にして、今後の年平均成長率の予測を立てます。
 
ハ) 市場の収益性
  市場の収益性は、業界企業の営業利益率の平均値をとる。上場企業だと、日経経営指標に掲載されているし、それ以外の企業でも中小企業庁等から情報入手できます。
 
 
ニ) 主要製品の販売価格動向
  主要製品の販売価格動向には、2つの捉え方があります。1つは、特定の製品を基準製品とし、その製品の価格動向を追いかける方法で、比較的イノベーションやモデルチェンジの少ない企業に向いています。もう1つは、売れ筋商品の価格帯を追いかける方法で、変化の激しい業界では、こちらの方が向いています。
競合分析
競合分析では、競合他社との差別化の可能性を探るために、「市場シェア」「収益性」「動向」を調査、分析します。
イ) 市場シェア
  業界全体の売上高推移、自社の売上高推移、競合他社(数社)の売上高推移を視覚的に表現し、大きな視点で見て、このまま行くとどうなりそうなのか、自社の競争上の地位は客観的に見るとどうなのか等を検討することが重要です。
次に、市場シェアは、マーケティングの4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:プロモーション)+情報で決まることが多いので、結果である市場シェアの要因をこの4P+情報という観点から分析し、課題を浮き彫りにして従来の戦略を再検討、あるいは新しい戦略を構築します。
 
ロ) 収益性
  業界全体の平均利益率等の推移、自社の利益率の推移、競合他社(数社)の利益率の推移を視覚的に表現し、市場シェアをみる時と同様に、大きな視点でみて、このまま行くとどうなりそうなのか、自社の競争上の地位は客観的にみるとどうなのか等を検討します。
次に、利益率の差の要因を変動費比率、固定費比率、インタレスト・カバレッジ・レシオ、限界利益率、労働分配率等の指標から探り、収益性の改善に取り組みます。
 
ハ) 競合他社の動向
  競合他社の動向に社員が常に意識する風土と情報等を共有化できる仕組みを持つことが大切です。
他社の動向としては、特に以下の4点に注目します。
●経営戦略の方向
●製品特性の変化、新製品開発・新商品取り扱いの動き、
●生産技術・設備等に対する投資計画、新ビジネスモデルの開発動向
●チャネル、プロモーションの新しい展開
【外部環境分析(ミクロ環境分析)】
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3 内部環境を分析する
(1) 自社の商品・サービスを分析する
ポジションを分析する
まず、自社の商品・サービスが対象としている市場、対象とすべき市場、対象としたい市場とマッチしているかどうか検証します。自社のこれまでの認識に反して意外とマッチしていない場合があります。
下記のような4象限からなる図にポジショニングすると分析がしやすくなります。
次に、自社の商品(製品)・サービスのマッチングをどう図るか考えます。具体的には、ターゲット市場を変えるのか、自社の商品(製品)・サービスを現時点の対象市場に合わせるのかを検討します。
また、将来的にどんな商品(製品)分野、どんな市場分野を自社の活動対象としたいか、するべきか、いくつかの商品(製品)や市場をどのような組み合わせで持つべきか、絞り込んだ商品(製品)を深耕するか、または商品(製品)系列の幅を拡げていくか等も検討します。
ライフサイクル上のどこに位置しているのか
商品(製品)・サービスは、それぞれのライフサイクルを持っています。企業は、自社の商品(製品)・サービス群が、現在ライフサイクル上のどのポジションに位置しているかを確認する必要があります。自社の商品(製品)・サービス群の多くが成熟期以降に位置しているならば、新商品(製品)・サービス群を早く投入しないと、業績は下降していくことになります。
また、導入期にある商品(製品)・サービス群については、市場との整合性、市場の将来性、競争状況等から今後の戦略を検討する必要がありますし、成長期にある商品(製品)・サービス群については、利益の極大化、シェアの拡大を図るための戦略を検討すべきです。
商品(製品)ごとの売上・利益に対する貢献度はどうか
商品(製品)別の売上高、貢献利益をABC分析や推移表により分析し、どの商品(製品)を強化するか、どの商品(製品)の取り扱いを中止するか等を検討します。
(2) 自社のマネジメントシステムを分析する
自社のマネジメントシステムを組織・人事、財務、業務システム、情報等の面から分析します。
組織・人事の分析
「組織は戦略に従う」の言葉どおり、戦略の方向性により適切な組織のあり方は変わってきます。その戦略の方向性に沿って人材を配置、役割を担わせ、さらに能力を高めていくことが組織運営のポイントです。よって、組織・人事の分析では、組織体制・リスク管理、人事システム・人材育成、組織風土といった観点から分析します。
イ) 組織体制・リスク管理
社員の年齢構成、男女別・部門別の人員構成、アルバイト・パートの割合など基礎的なデータを整理し、基本的な組織構造をまとめ、責任と権限、意志決定、経営計画、業績管理、リスク管理、内部牽制等の実施状況、運営状況が適切かどうかを分析します。
ロ) 人事システム・人材育成
人事システムにおいては、社員をどのように目標達成に向かわせるかということが最大課題です。人事では、「採用」、「評価」、「処遇」、「育成」といったテーマが検討の対象となり、人事制度や賃金制度の有効性が特に重要です。
具体的には、採用方針、人材配置、人材育成、教育研修、人事考課、昇給・昇進・昇格、給与水準、福利厚生、就労環境、労働条件等を確認します。
ハ) 組織風土
組織風土をつくる土壌になっているのが経営理念等なので、経営理念、経営方針、経営目標がどの程度浸透しているかを明らかにします。また、組織内のコミュニケーションがスムーズにおこなわれているか、モラルはどうか、情報が共有化されているか、報告・連絡・相談が体質化されているか、労使関係は良好か等の観点からも組織を調査し、組織風土を分析します。
財務管理の分析
経営管理をしっかりと行うためには、財務管理がきちんと行われていなければなりません。財務会計は当然として、管理会計の活用により業績管理が月次で実施され、その分析結果等が経営のコントロールに活かされなければなりません。
財務管理の状況を、経営計画、資金管理、予実分析(月次決算)、業績評価、原価計算、資産管理等の面から確認します。
業務システムの分析
業務システムの分析では、企業が製品を作り、顧客に届け、アフターサービスを行うまでの一連の流れを対象に、各活動がどれだけの付加価値(成果-コスト)を生んでおり、またどこに問題があるかという観点から検討を加え、分析します。
情報の分析
情報は現代経営においては不可欠なものですが、それが活かされるためには共有化され、効率利用できるようになっていなければなりません。
よって、情報の分析では、経営管理のために必要な情報が必要なときに把握できるようになっているかという視点で分析します。
また、情報管理の適切さのチェックも重要です。
具体的には、情報システムの整備状況、情報の活用状況、業務の省力化状況、セキュリティー管理状況等の面から確認します。
分析に際し、売上情報、受注情報、発注情報、在庫情報等を管理している担当者へのインタビューも実施します。
  【内部環境分析】
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