個人編 税務会計における節税対策

Ⅰ.青色申告による節税

1  青色申告とは

確定申告には、青色申告と白色申告があります。
青色申告では、決められた帳簿に日々の取引を正確に記録し、その帳簿記録に基づいて所得と税額を計算することを事業主に義務づけています。そのかわり、青色申告特別控除など節税につながる特典をあたえているのです。

【青色申告と白色申告の比較】

記帳方法 特典
白色申告
一般向けの申告
簡易簿記 特別控除・節税メリットなし
青色申告
・不動産所得
・ 事業所得
・ 山林所得
がある人が選べる申告
複式簿記 青色申告特別控除
65万円
その他節税メリットあり
現金主義簡易簿記 青色申告特別控除
10万円
その他節税メリットあり

(1)青色申告者の義務
青色申告者には、所得税法上、以下のような義務があります。義務というと負担を感じるかもしれませんが、事業を行っていくうえでは、事業者として当然のことばかりです。

【帳簿書類の備付と記帳】

青色申告者は、一定の帳簿を備え付けて、すべての取引を正規の簿記の原則に従い、整然かつ明瞭に記録しなければなりません。つまり、複式簿記により記録しなければならないのです。
複式簿記といっても難しく考える必要はありません。会計ソフトなどを利用することにより簡単に作成できます。

【決算整理と決算書の作成】

青色申告者は毎年12月31日に棚卸資産の棚卸を行わなければなりません。棚卸を行う際には、棚卸表を作成して、棚卸資産の種類、品質、形等の異なるごとに、数量、単価、金額を記載します。
棚卸のほかにも決算のために必要な事項の整理を行い、12月31日現在で、貸借対照表と損益計算書を作成しなければなりません。

【青色申告決算書の提出】

青色申告者は、確定申告書に青色申告決算書を添付して提出しなければなりません。
青色申告決算書には、損益計算書、損益計算書の内訳項目、貸借対照表などを記載することになっています。

【帳簿書類の整理保存】

青色申告者は、一定の帳簿と書類を整理して保存しなければなりません。

種類 具体的な内容 保存期間
帳簿 ・ 仕訳帳
・ 総勘定元帳
・ 現金預金出納帳
・ 経費帳
・ 固定資産台帳
・ 得意先元帳、仕入先元帳
7年
決算書類 ・ 貸借対照表
・ 損益計算書
・ 棚卸表
・ 決算関係のその他の書類
7年
現金預金取引等関係書類 ・ 預金通帳
・ 小切手帳のミミ
・ 請求書
・ 領収書
7年
その他の書類 ・ 見積書
・ 注文書
・ 納品書
・ 送り状
5年

(2)青色申告者の届出
青色申告は、事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行っている者で、承認申請期限までに税務署長宛に届出を行ったもののみができる特典です。

【承認申請期限】

青色申告をしようとする年の3月15日
1月16日以後の開業者は開業の日から2ヶ月以内
相続等により事業を承継した場合には、相続の日により提出期限が異なります。
2  青色申告の特典

(1)青色申告の特典

青色申告には数々の特典があります。これらを活かすことが節税のポイントです。

【青色申告の特典】

青色申告特別控除
 
記帳方法 控除額
複式簿記 65万円
現金主義簡易簿記 10万円
青色事業専従者給与
家族が従業員として働いている場合、その給与は青色事業専従者給与として適正な範囲内までは必要経費に算入できます。
純損失の繰越控除
赤字の所得金額を翌年以降3年間繰越してその年の所得金額から差し引くことができます。
純損失の繰戻還付
赤字を出した場合には、純損失の金額を前年に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を受けることができます。
家事関連費用の必要経費算入
家事関連費(電気代や水道光熱費、家賃など)のうち、事業に使ったことが明らかな部分は必要経費として認められます。
推計課税の制限
引当金の繰入
貸倒引当金などの引当金の繰入ができます。
特別償却・割増償却
減価償却資産について、各種の特別償却や割増償却が認められます。

Ⅱ.専従者給与支払いによる節税

個人事業の場合、配偶者や親族が従業員として働いていることが多くあります。しかし、事業者が生計を一にしている配偶者、その他親族に支払う給料は、原則として必要経費に算入できません。ただし例外として、配偶者や親族を青色事業専従者として届出して場合には、その給料を必要経費に算入できることになっています。

青色事業専従者に対する給与は、所得税法上の特例ですので、厳しい制限があります。

1  青色事業専従者の要件とは
要件1 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
 
要件2 その年12月31日現在で年齢15歳以上であるこ
  事業主または専従者が死亡した場合にはその死亡時で判定します
 
要件3 専ら青色申告者の事業に従事していること
  専ら事業に従事するとは、その事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月を越えていることをいいます。ただし、次の場合には、事業を従事できる期間を通じて1/2を超えればよいことになっています。

年の途中の開業等その事業が年中を通して営まれなかった場合
長期の病気、婚姻などで専従者がその年中を通して事業に従事できない事情があった場合

なお、次のものは、青色専従者にはなり得ないので、注意が必要です。

高校、大学、専修学校または各種学校の生徒である場合
(夜間の学生を除く)
他の職業のある場合
老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者
2  青色事業専従者の必要経費算入額

青色事業専従者に対して支払われた給与についても、必要経費に算入されるのはつぎの3つのうち最も少ない金額となっています。

現実の給与として支払われた金額
税務署長に提出した「青色事業専従者に関する届出書」に記載された給与の金額
労務の対価として相当と認められた金額
  労務の対価として相当であるかどうかは、次で判断されます。
専従者の労務に従事した期間、労務の性質とその提供の程度
その事業に従事する他の使用人が支払いを受ける給与の状況。その事業と同種の事業で、その規模が類似するも者に従事する者が支払いを受ける給与
その事業の書類及び規模と収益の状況
3  白色事業専従者

白色申告者の場合、事業専従者の要件は、青色申告者と同様ですが、必要経費算入は次の二つの金額のどちらか低い金額です。

事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円。配偶者でなければ専従者一人につき50万円
この控除をする前の事業の所得金額を、専従者の数に1を足した数で割った金額

 

Ⅲ.生計を一にする親族が負担する支出を費用にする

個人事業者が事業を営んでいる場合、配偶者や父母、子ども等家族が従業員として働いていることがあります。また、家族や親族の所有する建物等を使用したり、資金の借入を行ったりする場合があります。
他人の場合には、給与や家賃、支払利息の支払をするのと同様に、家族や親族に対しても同じように対価の支払をすることがあります。
しかし、所得税法では、生計を一にする親族に対する対価については必要経費に算入できないという規定があります(別生計の場合には、必要経費となります。)

(1)生計一親族とは
生計一親族とは、所得や生活場所に関わらず、同一の生活共同体として生活しているかどうかがポイントとなります。具体的には次のような基準により判断します。

【生計一親族の判断基準】

所得基準はありませんので、共働きの場合でも夫婦が生計一となります。
同居も要件となりませんので、病気で入院している場合や、介護施設に入居している場合、就学のために一人暮らしをしている場合で、生活費や学費の負担をしている場合にも生計一となります。
2世帯住宅等についても、明らかに互いに独立した生活形態を営んでいる場合以外には生計一となります。

(2)生計一親族の負担する支出を必要経費とする
他人への対価は必要経費となるのに、生計一親族に対する対価は必要経費とならないこととなると、その分だけ所得が増加して税額も増加することなり不公平が生じます。
そこで、所得税法では生計一親族に対する対価を必要経費としない代わりに次のような規定を設けております。

事業のために親族が他に支出した費用がある場合には、その費用を事業主の必要経費に算入します。
  ≪具体例≫
建物等を使用している場合~親族が負担する固定資産税、火災保険料、借入金利息、修繕費、維持管理費等
支払を受けた親族は、その収入は所得税法上、ないものとみなされます。従いまして、たとえ家賃の支払等を受けたとしても、その金額は控除対象配偶者や扶養親族の判定には含まれません。
給与に関しては、一定の要件を満たした場合には、専従者給与等として必要経費に算入できます。(専従者給与の項参照)

 

Ⅳ.交際費の上限はない

1  事業に必要な交際費については上限が無い

事業者が、取引先との関係を友好に保つための方法として、接待は欠かせないものの一つです。法人の場合には、税務上は原則損金不算入(一部例外規定あり)となっていますが、個人事業者の場合には、金額に上限がありませんので支出した費用は全額必要経費となります。

2  個人事業者の交際費は要件が厳しい

所得税法では、接待交際費は家事関連費に区分されており一定の要件を満たす場合は必要経費になります。

その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費
青色申告者の家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録などに基づいて不動産所得、事業所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

税務調査では個人の家事関連費の可否判定を必ず行います。交際費については、いつ、誰と、何のためにの3点が重要なポイントとなります。これを証明するためには、領収書には接待した者の記載はもちろん、その理由が事業関連であることの記載も忘れずに行うことが重要です。

 

Ⅴ.貸倒引当金を費用とする

1  貸倒引当金とは

事業者は、将来発生するかもしれない売掛金や貸付金等の金銭債権の貸倒に備えて、一定の方法で計算した貸倒引当金を設定することができます。設定した貸倒引当金は、必要経費となります。

貸倒引当金に繰入れた金額は、翌年に戻入れを行い、収入計上しなければなりません。したがって、2年間を通算してみると貸倒引当金の繰入をしなくても同じになるため、引当金を設定しない場合もあります。しかし、今年は特に利益が増加したというときの決算対策には効果があります。

2  個別評価の貸倒引当金を利用する

貸倒引当金は、12月31日現在の、事業に関係する売掛金、貸付金等の金銭債権合計額に、下記の割合を乗じて計算した金額を限度として設定する一括評価貸倒引当金と、一定の要件を満たした場合に設定できる、個別評価貸倒引当金があります。

個別評価金銭債権については、一括評価金銭債権に比べ貸倒となる可能性が高いものが対象となっているため、貸倒引当金の繰入限度額も多くなります。

(1)一括評価貸倒引当金の繰入限度額

事業の主たるものが金融業以外の事業の場合
・・・ 一般金銭債権の1000分の55
事業の主たるものが金融業である場合 
・・・ 一般金銭債権の1000分の 33

2)個別評価貸倒引当金の設定要件と繰入限度額

長期棚上金銭債権
  民事再生法の再生計画認可の決定等により、翌年以降に返済を受けることとなった金銭債権のうち、翌年以降5年以内に返済を受ける金額以外の金額(担保等により回収可能部分を除く)がある場合には、その長期棚上額相当額の貸倒引当金を設定できる。
 
取立ての見込みが無い場合
  債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し且つ事業に好転の見込みが無い場合や、災害等により甚大な被害を受けたことより、金銭債権の一部について取り立ての見込みがないと認められる場合におけるその取立て不能見込額相当額の貸倒引当金を設定できる。
 
形式基準
  民事再生法の再生手続開始の申立て等があった場合には、実質的に債権と見られない金額を除いた金額の50%相当額の貸倒引当金を設定できる。

 

Ⅵ.不良債権を貸倒にする

1  貸倒は必要経費に

売掛金、貸付金、前渡金などの債権が回収不能になったときは、貸倒損失として必要経費に算入できることになっています。

ただし、債権が回収不可能になったからといってただちに貸倒れとして認めるわけではありません。税法上、債権の貸倒れがあったものとして必要経費への算入が認められるのは次の条件に限られています。

2  貸倒損失が認められる条件
(1) 法律上の貸倒
会社更生法の更生計画の認可決定・特別清算の協定認可、整理計画の決定・和議法の和議決定・債権者集会での合理的基準による協議決定・行政機関.金融機関の斡旋による協議契約があった場合には、その決定により切り捨てられる部分の金額を貸倒損失とする。
 
債務者の債務超過が相当期間継続し、弁済不能と認められる場合に、書面で債務免除を通知した場合には、その通知した金額を貸倒損失とする。
(2) 事実上の貸倒
債務者の資産状況、支払能力からみて全額が回収不能と認められる場合には、その全額を貸倒損失とする。
(3) 形式上の貸倒
継続的な取引を行っていた債務者との取引を停止した時以後1年を経過した場合には担保物がある場合を除き、その債権金額を貸倒損失とする。
3  貸倒処理できない不良債権は譲渡する

回収の見込みがない債権をすべて、貸倒損失として処理できれば何も問題はありません。 しかし前述の通り、不良債権を貸倒処理できる条件は、上記3つ条件に限られます。 そこで回収の見込みが少なく、貸倒処理できない債権については、これを第三者に譲渡してしまうという方法が考えられます。

不良債権ですから、もちろん譲渡金額はその債権の額面金額よりも少なくなりますが、資金の一部は確実に回収することができますし、債権を譲渡したことによる損失は必要経費に算入することが出来ますので、十分検討に値するでしょう。

 

Ⅶ.租税公課の必要経費算入時期を工夫する

1  消費税の必要経費算入時期

(1)消費税の必要経費算入時期

消費税は所得税等と同様に申告課税方式となっており、申告した年分の必要経費とされます。個人事業者の消費税の確定申告は、翌年の3月31日までに行うこととなっています。

(2)税込経理であることを活用する
税込経理は、支払った金額が本来の価格と消費税とを区分しないで合計額で経理する方法です。本来価額と区分する税抜経理に比べ、現在の消費税の預かり高の把握が難しいという点がある一方で、経理処理が簡単なことから、小規模な企業で広く使われている方法です。
税込経理の場合には、前述の通り消費税の申告を税務署に提出した日を含む事業年度の費用として計算しますから、翌事業年度の費用になります。
しかし、税込経理により消費税を計算している場合において、申告期限がまだ来ない消費税を未払消費税として必要経費に算入している場合には、その計算が認められることになっています。つまり、未払金とした消費税分が費用とすることができるということです。

(3)継続的に適用しなければならない
上記の規定については、毎年継続的に適用することが要件となっています。従いまして、利益調整のために、年により必要経費算入方法を変更したり、金額の一部だけを必要経費とすることはできませんので注意が必要です。

2  固定資産税の必要経費算入時期を利用する

固定資産税は、その年の1月1日現在所有している固定資産(土地、家屋等及び償却資産)の所有者に対し、課税台帳に基づき課税されます。
課税標準と税額計算は次のとおりとなります。

土地・家屋
基準年度(3年ごとに評価替え)の1月1日現在で課税台帳に登録されている価格を基礎として計算されます。
住宅用地については、課税標準となるべき価額の1/3(200㎡以下の小規模住宅用地の部分1/6)が課税標準となります。(特定有料賃貸住宅については、最初の5年間の固定資産税の2/3を減額)。
新築住宅用家屋については、税額が1/2に減額とされる特例措置があります。
計算は、
( 課税台帳価格 - 30万円(土地)、20万円(家屋) ) × 1.4%
となります。
さらに、土地については所要の税負担の調整措置が行われて税額が計算されます。償却資産
1月1日現在の償却資産の課税台帳に登録されている価格を基礎として計算されます。
なお、大規模の償却資産については、都道府県で課税する場合があります。
計算は、
( 課税台帳価格 - 150万 )× 1.4%
となります。

賦課課税方式の租税である不動産取得税、自動車税、都市計画税と同様に納税通知により納付税額が確定することになります。固定資産税の場合4月に納税通知が届き、年4回(6月、9月、12月、2月)の納付をしなければなりません。
支払った都度費用とすることもできますが、納税通知を受け取った時に総額を未払計上することで費用とすることで節税ができます。(法基通9-5-1(2))

 

Ⅷ.自宅を事務所として利用して節税

1  自宅部分を一部経費化する

経営者になると従業員には見せられない、人事や経理関係の重要事項の書類を作成、保管する場所として自宅の一部を事務所に使用している事も多いはずです。
個人事業主が、自宅の一部をオフィスや書類保管庫等として使用している場合には、床面積按分などによりその一部を費用とすることができます。
自己所有の場合には、建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料、借入金利息等が、賃借物件の場合には、家賃が必要経費となります。
ただし、自宅をオフィスとして使用する場合でもその全部を使用していることはあり得ないでしょうから、事業用部分の面積や使用時間など、合理的な基準で業務上の使用割合を定め、これに対応した部分のみが必要経費となります。従いまして、過大な基準で算定された場合や、根拠のないものは費用になりません。

2  家事費および家事関連費

上記1のほか、以下のように判定を行ったうえで費用として計上できる場合があります。

【税法上の基準(所得税法施行令96】

【税法上の基準(所得税法施行令96)】

(1) 家事関連費の主たる部分がその所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要であるべき部分を明らかに区分することができる場合には、その部分に限り必要経費に算入し、その部分が明らかに区分されない場合には、その家事関連費の全額を必要経費に算入しない。
(2) 青色申告者については、上記(1)のほか、家事関連費のうち、取引の記録等に基づいてその事業の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額は必要経費に算入する。

【税務調査での実地確認】

税務調査では、その使用状況を実地で確認されます。その際に、事務所・資料保管庫としての体裁が整っていない場合や、事業との区分が不明確であるなど、申告と異なる場合には、その経費性を否認される可能性があります。

以下でこれまでに否認された例を示しますので、必要経費として計上する前に確認をしておいてください。(制作・著作/国税不服審判所)

【ロータリークラブの会費は事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできないとした事例】

裁決事例集 No.25 – 42頁

家事関連費が必要経費として控除されるためには、業務上の必要性及びその必要である部分が客観的に明らかでなければならないものと解されるところ、請求人においてロータリークラブの例会を中心とする各種会合に参加し、各種職業の経営者と懇親を深め、社会的信用を高めることは、請求人の公認会計士としての業務に何らかの利益をもたらすであろうことは否定できないが、ロータリークラブに入会したこと及びその例会に参加することが主として業務上の必要性に基づくものであると客観的に認めることはできないので、本件ロータリークラブ年会費の額を事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することはできない。

昭和58年1月27日裁決

【医師が医院建築資金を銀行から借り入れる際に締結した生命保険契約に係る支払保険料は、家事上の経費に該当し、事業所得の金額の計算上必要経費とはならないとした事例】

裁決事例集 No.29 – 30頁

整形外科医師である請求人が銀行から医院建築資金を借り入れる際に銀行の要請によって締結した本件生命保険契約は、保険金受取人を請求人の妻及び子としており、仮に保険事故が発生し保険金が支払われた場合、請求人の妻子に継承される債務を減少させるとともに、連帯保証人でもある妻の債務の負担を免れ又は軽減させることになるものであり、もって請求人の妻子の生活を安定させるために締結されたものであるから、これに基づく本件生命保険料は、所得税法施行令第96条第1号及び第2号に規定する経費とは認められず、同法第45条第1項第1号に規定する家事上の経費というべきであり、同法第37条に規定する必要経費に該当するものではない。

昭和60年1月28日裁決

【請求人の従業員は、青色事業専従者である配偶者のみであるところ、従業員等のレクリェーションのため慰安旅行をし 福利厚生費として処理したが、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないとして否認した事例】

裁決事例集 No.42 – 44頁

請求人は、本件慰安旅行費用のうち、請求人及び事業専従者である配偶者に要した費用は、従業員等のレクリェーション費用として必要経費の額に算入される旨主張するが、[1]本件旅行は、家族4人のみで毎年8月に、配偶者及び子女の都合・希望を聞いて実施されており、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないこと及び[2]本件以外にも同様の旅行を実施しているのに、本件旅行費用のみ必要経費になるとした理由も明らかでないことから、本件旅行は、他の企業が実施している従業員のための慰安旅行と変わらないという請求人の主観的理由のみで事業に関連性を持たせ、必要経費に該当すると判断したにすぎず、客観的にみて事業遂行上必要なものであるかが明らかでなく、通常の家族旅行との相違点も認められないため、家事上の経費と判断するのが相当である。

平成3年11月19日裁決

【従業員であり請求人の母親である者の死亡に伴い支出した弔慰金及び香典は、事業と直接の関連を有し、客観的に通常かつ必要な費用であるとは認められないことから、必要経費に算入することはできないとした事例】

裁決事例集 No.54 – 141頁

請求人は、従業員であり請求人の母親である者の死亡に伴い支出した本件弔慰金及び本件香典は、事業所得金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件弔慰金については、その理由があいまいであり、かつ、その金額の計算方法も不動産所得の基因となる建物の管理等の労務の対価及び建築後の経過年数を用いているなど合理性、整合性がないことから、事業と直接の関連を有し、客観的に通常かつ必要な費用であるとは認められない。
また、本件香典については、葬儀費用の負担者は喪主である請求人であり、本件香典を手向けた者と本件香典の受取人は請求人自身であると認められることから、香典として経理処理等をしたことをもって、事業遂行上客観的に通常必要な費用であるとは認められない。仮に業務関連部分があるとしても、家事関連費とみるのが相当であるところ、業務遂行上必要である部分を明らかに区分することができず、所得税法施行令第96条に規定する経費に該当しない。
よって、本件弔慰金及び本件香典はその全額について必要経費に算入することはできない。

平成9年12月10日裁決

【請求人が支出した諸会費等が家事関連費に該当するとしても、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることができないから、必要経費の額に算入することはできないとした事例】

裁決事例集 No.61 – 129頁

請求人は、同人が支出した諸会費等(同窓会費、共済負担金、英会話研修費、旅費交通費、同窓会主催旅行の参加費用等)は、請求人の業務の遂行上必要な経費であるから、必要経費の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、支出した経費が、業務の遂行上直接必要である場合はもちろんのこと、それが家事関連費であっても、[1]その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合、及び[2]青色申告であれば取引の記録等に基づき業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることができる場合に、それぞれその明らかな部分を必要経費に算入することができることとされているところ、請求人の主張する諸会費等はいずれも家事費又は家事関連費と認められ、家事関連費に該当するとしても、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることはできないから、これを必要経費の額に算入することはできない。

平成13年3月30日裁決

【修士及び博士課程の授業料等並びに米国の大学への寄付金は弁護士業に係る事業所得の必要経費とすることはできないとした事例】

裁決事例集 No.66 – 120頁

弁護士業を営む請求人は、大学院の修士及び博士課程の授業料等並びに米国K大学への寄付金は業務遂行上必要な支出であるから事業所得の金額の計算上必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、修士及び博士課程の専攻は、請求人の営む弁護士業と関連性を有していることは認められるものの、むしろ請求人の自己研鑽のため進学したものと認めるのが相当で、また、当該寄付金の支出は、請求人の善意的心情からのものと認められ、いずれも業務遂行上直接かつ通常必要なものとは認められず、事業所得を生ずべき業務について生じた費用ではないから、所得税法第37条第1項に規定する必要経費とすることはできない。

平成15年10月27日裁決

以下は、上記とは異なり税務調査で否認されたものの裁判で逆転し認められた案件です。
【本件建物は、その一部を居住の用に供した事実はなく、そのすべてが事業の用に供されていると認定した事例】

裁決事例集 No.28 – 62頁

請求人所有の本件建物の一部は居住の用に供されているとして、その部分に係る固定資産税及び減価償却費の額は必要経費に算入することができないとした原処分について、本件建物は、その利用状況からみて請求人及びその家族の居住を主目的として利用された事実はなく、請求人の歯科診療所として利用されているので、当該建物全部に係る固定資産税及び減価償却費の額は事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。

昭和59年9月12日裁決

 

Ⅸ.個人事業より法人が税務上有利

個人事業の税制と法人の税制では、実は法人のほうがずっと有利です。個人事業者の究極の節税対策、最後の節税対策は法人成りなのです。

1  個人と法人の税負担の比較

<設例1>

事業による所得が1,500万円とする
  (法人では、このうち1,200万円を代表者に役員給与として支給する。したがって法人の所得は300万円となる)
所得控除は200万円とする

(1)個人の所得税


課税総所得  1,500万円-200万円=1,300万円
所得税、住民税額  1,300万円×43%-153万6000円=405万4千円

(2)法人の場合の法人税と所得税の合計

法人税額の計算 300万円×22%=66万円
  地方税額の計算 県民税・市民税 66万円×20%(概算)=13万2千円
  事業税額 300万円×5%=15万円
合計 94万2千円
代表者の所得税額の計算
給与所得控除後の給与等の金額 1,200万円×95%-170万円=970万円
課税総所得 970万円-200万円=770万円
所得税額 770万×33%-63万6000円=190万5千円
法人税と所得税の合計 284万7千円
(3)法人成りによる節税 120万7千円
2  法人成りで経費の範囲を広げる

(1)借入金利子等

個人が借入により住宅等を購入した場合、賃貸など事業で使う場合を除いては、借入金利子は必要経費になりません。一方で法人が住宅等を購入して住居兼仕事場とすれば、借入金利子は会社の経費になります。ただし、住宅部分については、一定の方法で計算した家賃相当額を法人に支払う必要があります。

(2)家族従業員に支給する給与

個人事業者が家族従業員に給与を支払っても、事業専従者控除や青色専従者給与などの特例を除くと、原則として必要経費になりません。
一方、会社で社長の家族従業員に給与を支給すれは適正な額である限り損金に算入されます。

(3)代表者や家族従業員への退職金

20年30年と個人事業を続けて引退したとしても、個人事業では退職という概念がないので、退職金を支払うことはできません。一方で、自分で法人を設立し社長となり、同じように20年30年と働いて退職した場合、会社が社長の実績に応じた退職金を支払えば、損金に算入されます。このことは、配偶者やその他親族に支給した退職金でああっても同様です。

(4)家族に支払う賃借料・借入金利子

個人事業では、生計を一にする配偶者やその他の親族に家賃、借入金利子などを支払っても必要経費に算入することはできません。
これに対し、法人では、たとえ家族に支払う賃借料・借入金利子であっても。相当な金額であれば損金に算入されます。

(5)減価償却

個人事業では、減価償却は強制償却ですので、赤字の時にも償却しなければなりません。
これに対し、法人では、減価償却は任意償却ですので、赤字のときは必ずしも償却する必要はなく、償却による減価償却資産の費用化を次期以降に繰延べることが出来ます。

(6)赤字の繰越

個人事業では青色申告をしている場合、赤字の繰越ができるのは3年間です。
これに対し、法人が青色申告をしている場合では、赤字の繰越は7年間することが出来ます。
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