資金繰り改善にはコツがある

資金繰りが悪化してきた場合は、まず悪化の原因を探ることから始めます。
資金繰り悪化の原因は以下のように整理できます。

キャッシュ・インの減少

  • 売上の減少
  • 費用の増加
  • 売掛債権の回収遅れ

キャッシュ・アウトの増加

  • 過大在庫
  • 過剰な設備投資
  • 過大な不良資産
  • 仕入債務の早期支払
  • 前払金、貸付金、仮払金の増加
  • 借入金早期返済

自社の資金繰り悪化の原因がどこにあるかをしっかり認識してしかるべき手をスピーディーに打つ事が重要となってきます。
これには躊躇している時間はなく、躊躇している間にも資金不足は進み、やがて企業の血液である資金が回らなくなってしまいます。
決断とスピードが命です。

売掛債権は早期に回収する

売掛債権の早期回収の為には、回収基準がルールとして存在することが前提で、取引先別管理の徹底と、担当者の売掛残に対する問題意識が必要です。営業マンは売上や粗利益については高い意識を持っていますが、回収については無関心、無頓着である社員が少なくありません。社内でのルールが曖昧であったり、徹底されていない場合は早急に着手することが重要です。
また、売掛債権には、貸し倒れというリスクが常に付きまといます。貸し倒れのリスクを軽減するためには、販売先の情報収集を怠らないことです。その情報をもとにして、販売先のランク付けと、売掛限度額を設定することが必要であり、場合によっては、売掛債権の回収条件を変更します。
さらに、販売先の経営状況が思わしくないといった情報を入手したら、たとえ売掛限度額の範疇であっても、販売を停止し、場合によっては商品を引き揚げるぐらいのことを行わなければなりません。

売掛債権早期回収の具体例

  • 手形割引を活用する
  • 長期売掛債権のファクタリングを活用する
  • 代金引換や銀行振り込みなどの現金決済へ条件変更する

不要な在庫は
一刻も早く処分する

いかにすばらしいシステムの導入や手法の採用を実施しても不良在庫は生まれます。また、どのような緻密な生産、販売そして在庫計画を立てても、必ずといっていいほど狂いが生じます。その狂いは、時間がたつにつれ、次第に蓄積されていきます。これが動きの鈍い在庫、すなわち不良在庫が生じる原因となります。そのまま、放置していると、在庫全体に占める割合が高くなり、さまざまな問題が生じることとなります。
例えば、すでに支払いも完了し、販売されて代金回収が済んでいる在庫であれば、資金繰りに影響を与えませんが、いまだに倉庫に眠っている不良在庫は資金繰り悪化につながります。また、在庫スペースが必要になったり、保管の為の維持費もかかります。いずれにしても不良在庫を抱えて良いことは何一つないということです。
このような状態から抜け出す為には、徹底した在庫管理が要求されます。

在庫削減の具体例

  • 単品管理を徹底し、死に筋(売れない製品・商品)の基準を作り短期サイクルで排除する
  • 長期滞留不良在庫は年度末に損失計上して処分する

投資は営業キャッシュフロー内での実施を徹底する

営業活動に投資は欠かせません。しかし、その投資の資金がどこから出ているかということに着目しなければなりません。
理想の姿は、営業キャッシュフローの範囲内で投資を抑える、つまりフリーキャッシュフローをプラスに保つということです。
フリーキャッシュフローがマイナスであれば、投資のために手持ち資金を減少させるか、借入金など他人資本に頼らなければなりません。手持ち資金を減少させた場合は資金繰りにも大きな影響を及ぼしますし、借入を行った場合でも支払利息の発生や元金償還によりやはり資金繰りに影響していきます。最悪の場合は、借入金返済のために新たな借入を起こすといったことになります。これでは何のために投資を行ったのかわかりません。
投資の際には、まずその投資が本当に必要なものなのかを十分検討すべきです。製造業において新たな機械を導入する場合でも、投資効果すなわち、その設備投資がもたらしてくれる利益はどの程度であるかを確認します。場合によっては自社で機械を持たずに、外注した方が、利益が上がることもあります。
どうしても借入が必要な場合は、返済原資を確保できるかをしっかりと見定めてから実施すべきです。

回収期限、支払期日は徹底的に
交渉し条件を改善する

資金繰りを改善するには、「回収はできるだけ早く」「支払はできるだけ遅く」が鉄則です。回収にしても支払にしても相手があることですので、相手との交渉が重要な鍵を握ります。
回収では、最初に確認すべきポイントとして自社に回収ルールがあるかどうかです。もしなければ早急に作成すべきです。回収ルールがある場合は、その通りに回収がされているかを点検します。営業マンは販売することには全精力を傾けますが、こと回収については無頓着な場合が多いため、徹底することが必要です。
また、回収の期日についても販売先と交渉をする必要があります。この交渉の良否で資金繰りが大きく好転する可能性があります。
商売は、仕入を行い、その商品を販売した代金から仕入の支払を行うことにより、その差額が利益となりキャッシュ増加となります。しかし、実際は販売代金の回収よりも仕入に対する支払を先に発生するため、買掛債務の支払期日と売掛債権の回収期日との日数分だけ資金が必要であり、資金繰りに影響を与えます。
そこで、仕入商品が何日間で販売できるのかを考慮し、仕入先に対して、できるだけ支払を延ばすような支払条件の交渉を行うことにより、資金繰りが楽になります。さらに、理想を言えば手形はできるだけ少なくして現金払いにすることです。手形による支払が全くなければ、手形不渡りによる倒産はありません。

  1. 支払サイトの延長交渉
  2. 締め日を変える
  3. 締め日を意識し、必要な分だけの仕入に努める

借入金の金利交渉、
返済方法交渉

金融機関に対して、借入金の返済条件の交渉を行います。まず月次返済額の減額、次に返済期間の繰延、つまり利息のみ支払い、元金返済を一次猶予してもらう方法もあります。いずれにしても、金融機関と交渉するにあたっては、経営改善計画が必須となるので種々のリストラも必要になります。
経営改善計画を立てるときのポイントは次の4項目です。

  1. 金融機関からの借り入れは5~7年で返済するようにする
  2. 経費の削減計画を立てる
  3. 収入計画はできるだけ低く見積もる
  4. 設備投資はできるだけ抑える

貸付金・仮払金は一掃する

貸付金や仮払金、前払金は、一時的には発生することはありますが、本来1~2ヶ月程度で解消すべき項目です。特に役員や関連会社に対する貸付金が慢性的に発生し、それが長期的に残っている状況が続くと、金融機関からの融資が受けられなくなる場合もあります。早急に回収して資金繰りを改善させる必要があります。
仮払金については、旅費の前借りなどを仮払金として処理をする場合が多いのですが、旅費精算のルールを徹底することが必要です。
また、赤字決算を避けるために賞与を仮払金や貸付金で処理する企業も見受けられますが、決してやるべきではありません。そもそも賞与を費用化できないような経営状況であれば、賞与は支払うべきではありません。社員を思う気持ちはわかりますが、それによって会社の資金繰りを悪化させることになるのであれば、本末転倒です。

  1. 旅費などの仮払金の精算ルールの徹底
  2. 慢性的な貸付金解消のために賞与との相殺を行う
  3. 旅費の前借制を廃止する

役員は私財を
投げ打ってでも会社を守る

役員は、会社の倒産を避ける責任があります。種々の対策を打っても、短期的に回復の見込みがなければ、役員は自らの資産を投げ打ってでも倒産を回避しなければなりません。役員資産の投入は、資金収支を改善するという直接的効果もさることながら、経営改革の本気度を役員が率先して示すという狙いもあります。そのような行為は組織を燃える集団へ変身させます。

  1. 増資を行い、役員に出資させる
  2. 役員が会社に対して貸付を行なう
  3. 少人数私募債を発行して役員にも引き受けさせる

少人数私募債の発行

社債の一種である少人数私募債を発行して資金調達を行うことで、資金不足を解消することができます。
少人数私募債は、次の要件を満たすことによって発行できます。

  • 株式会社であること
  • 発行人数が50人未満
  • 社債総額を社債の最低金額で割った値が50未満
  • 縁故関係者に対し直接募集

メリットには、次のようなものがあります。

  • 担保や保証人を不要にすることができる。
  • 金利、償還期間を自社で決めることができる。
  • 取締役会の決議で発行ができる。あとは、募集要項を決定してそれにしたがって、発行の手続きを進めればよい。

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