土地収用とは、公共の利益となる事業の用に供するため、土地の所有権その他の権利を、一連の手続きを経てその権利者の意思にかかわらず、国又は地方公共団体等に強制的に取得させる行為をいいます。収用に伴い、損失の補償が行われます。
これを収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例といいます。
この特例を受けると、売却した金額より買い換えた金額の方が多いときは所得税の課税の将来に繰り延べられ、売却した年については譲渡所得がなかったものとされます。
売却した金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。
この特例を受けるには、次の3要件すべてに当てはまることが必要です。
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この特例を受けるには、次の4要件のすべてに当てはまることが必要です。
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☆ワンポイントチェック
(1) | 同一の収用事業による土地の買取りが2年以上に渡って行われたとき 最初に譲渡があった年については、収用等の場合の特別控除の特例又は代替資産の特例のいずれかを選択することにより、特例の適用を受けることができます。 翌年以降については、代替資産を取得した場合の特例については適用を受けることはできますが、特別控除の特例の適用をうけることはできません。これは最初の譲渡があった年に特別控除の特例の適用を受けている・受けていないに関わらず適用を受けることができません。なお、下記の場合には別個の事業として取り扱われ、『最初に譲渡があった年』と同じく代替資産の特例と特別控除の特例のいずれかを選択して適用を受けることができます。 |
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(2) | 代替資産を取得しなかった場合の特別控除の適用の有無 収用等により土地等が買収された場合に、税務署長の承認を受けて代替資産を取得する見込みで課税の繰延べの特例の適用を受けていたが、都合により収用等のあった日以後2年以内に代替資産を取得しなかった場合には、その期間を経過した日の4ヶ月以内に、収用等のあった年分の所得税について修正申告書の提出が必要となるが、この申告書の提出に際し、特別控除の特例の適用を受けるための要件を満たしている場合には5,000万円特別控除の特例の適用を受けることができます。 |
個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡し、一定期間内に特定地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供した場合には、買換えの特例の適用を受けることができます。
この特例を受けますと、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは、売った金額に課税割合をかけた額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
売った金額より買換えた金額の方が少ないときは、その差額と買い換えた金額に課税割合をかけた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
これらの場合の課税割合は20%です。
譲渡所得の計算
① | 譲渡収入≦買換資産の取得価額のケース 譲渡収入×20%-(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%=譲渡所得金額 |
② | 譲渡収入>買換資産の取得価額のケース A―(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×A/譲渡収入=譲渡所得金額 A=譲渡収入-買換え資産の取得価額×80% |
この特例を受けるための適用要件は次の通りです。
① | 買換えのための譲渡資産と買換資産は、ともに事業用のものに限られます。 | ||||
② | 譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまることです。この組合せの代表的なものとして次のものがあります。 | ||||
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③ | 買換資産が土地の場合、取得する土地の面積が、原則として譲渡した土地の面積の5倍以内であることです。なお、一定の農地への買換えの場合は10倍または30倍以内とされることがあります。 | ||||
④ | 資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得することです。 | ||||
⑤ | 事業用資産を取得した日から1年以内に事業に使うことです。なお、取得してから1年以内に事業に使用しなくなった場合は、特例は受けられません。 |
既成市街地等内にある事業用の土地・建物を3億円で譲渡し、既成市街地等外にある事業用の土地・建物を2億8000万円で取得しました(うち土地1億円、建物1億8000万円)。
なお、買換えた土地の面積は譲渡した土地の面積の5倍以内です。
また、譲渡資産の取得費用および譲渡費用は1000万円です。
譲渡資産は長期所有です。
課税長期譲渡所得の計算
A=3億円-2億8000万円×80%=7600万円
課税長期譲渡所得=A-1000万円×A/3億円=7346万円
特定の事業用資産の買換え特例が適用されない譲渡には下記のようなものがあるため注意が必要となります。
① | 収用交換等による譲渡 |
② | 贈与(低額譲渡とみなされる場合も含む) |
③ | 交換(他の交換の特例の適用は可能 |
④ | 出資 |
⑤ | 代物弁済としての譲渡(金銭債務の弁済に代えてするものに限る) |
⑥ | 棚卸資産又は雑所得の基因となる土地等の譲渡 |
また、次のような資産は事業用資産に該当しません。
① | 事業用資産の買換えの特例を受けるためだけの目的で、一時的に事業の用途に使ったと認められる資産 |
② | たまたま、運動場、物品置場、駐車場などとして利用していた空地またはこれらの用途のために一時的に貸し付けていた土地 |
☆ | ワンポイントチェック |
平成4年度から、土地を取得するために要した借入金の利子に相当する金額は、不動産所得が赤字になる部分については、損益通算の対象とはならなくなりました。 土地建物を一括購入した場合には、先ず借入金が建物の購入に充て、次に土地に充てたと計算することが出来ます。 不動産事業が赤字の場合、借入金利息のうち不動産部分は、損益通算の対象にはなりません。 |
軽減の仕組み
ポイント
買換えた金額(売却金額の上限)の80%が、税金の計算上、売却しなかったものとみなされます。
注意点
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買換えのパターン
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